Lingerie TALK vol.12 『ワコール』

ワコール京都スタジオアーティスティックディレクターRIBON(松村昭子さん)(後編)

「与えられた情報だけでなく、
自分の足で感動を見つけ、
創造の引き出しをたくさん持って

ランジェリー界で活躍する方々のルーツ、ポリシー、そして夢を語って頂く、「Lingerie Talk @ Lingerie Press」。

今回登場して頂くのは、今年、創立68周年を迎えるワコールに席を置いて41年、これまで数々のブランドのデザイナーとして活躍されたRIBONさん。”ランジェリー愛”に溢れ、それを”創る”ことで表現し続けてこられた方の歴史を、じっくりお聞きしました。

本物に触れた時の感動の積み重ねが
デザインを支える

川原好惠(以下、川原):単品で商品開発するチームから、コーディネイトで提案するトレンドチームになったとのことですが、RIBONさん自身はブラジャーのデザインが長かったのですか?

RIBON(松村昭子)アーティスティック デザイナー(以下、RIBON):そうですね、様々なブランドに携わりながら、ブラジャーのパターンを探求し、のめり込み、どんどん好きになっていきました。1991年、「サルート」のデザイナー時代は、カッティングでどこまでバストを美しく造形できるか、とことん追求し、特化機能ブラのパターンを開発しました。このパターンは後に各ブランドで使用されましたし、1996年にはブライダルインナーで本格派のボディメイク下着を開発しました。2000年に誕生した「モアクレエ ネオ*」は、今を生きるキャリアのためのブランドで、“無理なく、無駄なく、カッコよく”がコンセプト。ストレスなくブラジャーを着け、服を美しく着こなすことが求められたので、あらゆるタイプのモールドカップを開発しました。様々なブランドをとおして、「ブラジャーはやりつくした」と自負しています。

*現在はブランド終了

川原:その頃と今では、市場も下着を取り巻く環境もずいぶん違うのでしょうね。

RIBON:そうですね。1980年代後半のバブル期は、とても贅沢なインポートランジェリーがたくさん輸入されていて、身近に見ることができました。六本木に「リリアナ・ルベキーニ」というシルクのランジェリーやナイトドレスを展開するイタリアブランドを売るブティックがあったんです。商品が美しいのはもちろんのこと、そこのマダムがノーブラでスリップを着てらして、私が「ブラジャーは着けないんですか?」とたずねたら、「女性のボディラインは本来美しいものだから、スリップをまとうだけで十分なのよ」とおっしゃって。本当に素敵で、少しでもその空気を感じ取りたくて通い詰めたことも。それに、弊社はシャンタル・トーマス、カルロス・ファルチ、カール・ラガーフェルドなどの一流デザイナーとも仕事をしていましたから、本当にいいものを間近で見られましたし、海外の素材もずいぶん贅沢に使わせてもらいました。

川原:それは、デザイナーにとって何よりもの財産ですね。

RIBON:時代は変わり、今は効率やスピードが求められ、常に結果を出さなければなりません。新人でも即戦力が求められます。やりがいにもなりますが、デザイナーには大変なことです。それに、街に出れば贅沢なインポート商品が見られる時代ではないため、若い人達が実際に、いいものに触れる機会が極端に減ってしまったのは、本当に残念ですね。あらゆる情報が瞬時に得られ、直ぐにスマートフォンの画面で見られる時代ではあるけれど、レースの繊細さ、軽さ、色の美しさは実際に触れないとわかりませんし、その感動の積み重ねが、デザインを支えると私は思います。

川原:RIBONさんは、女子美術大学でも教鞭をとっていらっしゃいますが、あらためて若い方へのメッセージをお願いします。

RIBON:人の言葉で伝えられた情報を、パソコンやスマートフォンの画面で知るのではなく、自分の足でドキドキすること、感動することを見つけに行って欲しいと思います。学生達にも「引き出しをたくさん持ちなさい」といつも言っています。

2014年、RIBONさんがディレクションした “Beauty Forever Suspense Art”(阪急うめだ本店での「からだ美」展内)の展示。豊かな表情のリアルマネキンを使い、ランジェリーをドラマチックに魅せました。
動画でも見ることができます→https://www.youtube.com/watch?v=ycs0x5xtm0k

 
新しい扉を開けて、さらに美しく...
そのきっかけを下着で作りたい

川原:41年間、デザイナーを続けてこられた原動力は何ですか?

RIBON:とにかく下着が好き、きれいなものが好き。そして、常に先駆者でありたい、と思っていましたから、チャレンジし続けたことでしょうか。新しい扉を開け、より美しくなって欲しい……そのきっかけとなる下着を創りたい、ずっとそう思って仕事してきました。若い時は何を着ても可愛くて、きれい。年齢を重ねた女性こそ、そんな気持ちを大切にして欲しいですね。

川原:2013年からは、総合企画室 広報・宣伝部の所属となり、京都スタジオのアーティスティックデザイナーとして活躍されています。RIBBONさんがプロデューサーとなって制作された2014年からのカレンダーは、どれも強く印象に残っています。

RIBON:はい、おかげさまで私が担当してから、3年間連続で「全国カレンダー展」で賞を頂きました。

川原:阪急うめだ本店での「からだ美」展や、麹町で催された「WACOAL LOVE MODE GALLERY」などの様々な展示イベントも、下着の魅力をお客様やメディアに伝えるきっかけになりましたよね。

RIBON:今は、テディ、ペチコート、パニエなどのランジェリーの美しさを、より多くの方に伝えたいと思っています。2017年のカレンダーでも、過去のアーカイヴをベースに現代のランジェリーを提案しましたが、若い人にとっては、とても新鮮だったようです。私も今日はワンピースの色と同じ色のスリップを着ているのですが、それだけで気分が上がります。本来、ランジェリーってそういうもの。今は、効率重視だからかランジェリーは縮小されているようですが、若い人が知らないからこそ、奇をてらわない、エレガントで美しいランジェリーにはビジネスチャンスがあると思います。

川原:今は3月の日本ボディファッション協会主催の展覧会に向け、制作が大詰めのようですね。

RIBON:はい、そんなランジェリーの美しさ・楽しさを伝える展覧会を、3月24〜26日の3日間、青山のスパイラルビルで開きます。情報は、これから少しずつ日本ボディファッション協会のHP(http://www.nbf.or.jp/)で公開されると思います。私だけでなく、参加企業のデザイナーやパタンナーが全力で制作にあたっていますので、楽しみにしていてください。最高のものにします!

RIBONさんがプロデュースしたワコール2014年のカレンダー。緻密に描かれたボディペインティングとその芸術性は高く評価され、ドイツの世界カレンダー展で銅賞を受賞しました。

同じく、2015年のカレンダー。ベルギーで活躍水中撮影を得意とするフォトグラファーを起用し、ブリュッセルのプールで撮影。モデルは元シンクロナイズドスイミング選手の双子が務めました。

 

インタビューを終えて……

いつお会いしても、ほとばしるランジェリー愛が伝わるRIBONさん。二人でお話していると、つい暴走してしまい、気付くとまわりを置き去ってしまっていることも(笑)。リーディングカンパニーである大企業で41年間クリエイターとして生き抜くには、人知れぬ努力が必要だったでしょうし、色んな思いを経験されたはず。それでも「ワコールのデザイナーとして、すべてのことができた」と笑顔で言い切る姿は、凛々しくて、すごく美しい。私も自分の仕事人生をそういうふうに振り返れるようになりたいと、あらためて思いました。

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