Lingerie TALK vol.24『PRISTINE』

(株)アバンティ 取締役製品部 統括マネージャー

奥森秀子さん(後編)

 

「”売り手良し・買い手良し・世間良し”

そして”作り手良し”の”四方良し”でありたい」

 

 

ランジェリー界で活躍する方々のルーツ、ポリシー、そして夢を語って頂く、「Lingerie Talk @ Lingerie Press」。今回は、ご本人の言葉を借りれば“オーガニックコットン屋”であるアバンティの製品づくりを統括する奥森秀子さんに登場していただきます。その黎明期から携わってこられた奥森さんは、オーガニックコットンが定着し市場に広がろうとしている現状をどのように見ていらっしゃるのか、その経緯と共にお聞きしました。

満足のいくブラジャーを発表できるのは2年に1度が限界
 

川原好恵(以下、川原):オーガニックコットンで下着を作るブランドとして、「プリスティン」はまさに先駆者ですが、苦労されたことは?

奥森秀子取締役(以下、奥森):「プリスティン」のブラジャーは、身生地だけでなく、フックアイ、ストラップ、テープ、ワイヤーループなどの副資材まですべてオーガニックコットンを使用しています。これらをオリジナルで作るとなると、とてもロットが大きいことは業界の方なら皆様ご存知かと思います。それらをすべてオーガニックコットンにこだわったので、本当に大変でした。「プリスティン」のインナーウェアのカテゴリーが確立したのは2005年ですが、それらが完成したのは2008年です。パターンを熟考し、すべての素材・資材をオーガニックコットンで揃え、満足のいく出来となると、新作を発表できるのは2年に1度が限界。それほど、ブラジャーを作るのは手間がかかります。ただ、お客様から「こんなブラジャーがあるんですね!」「このブラジャーに救われた」といった声を聞くのは本当に嬉しく、頑張る原動力になります。だからこそ「これしかないから仕方なく着けている」とは思ってほしくない。「着けていると楽しい、嬉しい」から選ばれるブラジャーでありたいと思います。

川原:布ナプキンを販売されたのも「プリスティン」は早かったですよね。

奥森:布ナプキンを作るきっかけとなったのは1995年の阪神淡路大震災です。地震発生直後の生理用品不足、その処分は現地で大きな問題となりました。そこで注目されたのが、洗って何度も使える布ナプキンです。当時、海外にはあったものの日本製はなく、災害時の備蓄用として開発が始まったんです。その後、使ったことがある人からは「体が本当に楽」といって徐々に浸透してはいきましたが、百貨店の売場では、目につく所には置くなと注意されたものです。生理用品は隠すものというのが常識ですから。それが最近では、日本製の布ナプキンがたくさんありますし、百貨店でも欠品していたら怒られます(笑)。まさか、こんな日が来るとは思いませんでしたね。コツコツ長くやっていて良かったと、心から思います。

ストラップ、フックアイ、レース部分まで、とことんオーガニックにこだわり、“気持ちよさ”を追求。プリスティン自慢のロングセラーアイテム。オールオーガニックブラ8000円、オールオーガニックショーツ3000円
(photo:PRISTINE)

生地はもちろん、縫製糸・刺繍糸に至るまで、すべてオーガニックコットン。前面は大きな花刺繍のレース生地を使用したエレガントなセット。エンブロイダリーブラ9000円、エンブロイダリーショーツ3700円
(photo:PRISTINE)

ブラジャーに白鳥の羽のようなリフトをつけ、ノンワイヤーでありながらバストメイクを可能に。ふわぴたスワンブラ9000円、ふわふわスワンショーツ3000円
(photo:PRISTINE)

作り手が使ってくれる人のことを想って縫っています

 

川原:今まで仕事されてきた中で、一番つらかったことは?

奥森:つらかったことは……ないですね。「より良い物を作って伝えたい」その一心でこれまでやってきて、ありがたいことに「プリスティン」は毎年2ケタ増で成長しています。仕事はハードですが大きな病気をしたこともなく、丈夫な体に生んでくれた親に感謝しています。

川原:本当に何もないですか……何か一つくらいエピソードを(笑)。

奥森:そうだ! ありました(笑)!10数年前、OEM(相手先ブランドによる生産)で約400枚のパジャマの企画・生産を請けたときのことです。初めてお付き合いするある工場に縫製をお願いしていて、納品前日になったので受け取りに行ったら、いくら待っても商品どころか担当者も出てこない。問いつめると、別に謝るわけでもなく、あっさり「やっていない」と言われました。その工場は約束を守ってくれなかったわけですが、私たちには取引先との約束があります。すぐに創業時からお願いしている足利の工場に泣きながら電話したら「やってみるよ」と言ってくださり、その足で引き上げた素材を運びました。おかげで、最小限の納期遅れで済み、なんとか窮地を乗り越えました。そのとき、あらためて作り手の皆さんのありがたさが心に沁みましたね。近江商人の言葉に「三方良し(売り手良し・買い手良し・世間良し、の意)」とありますが、弊社は、それに「作り手良し」を加えて「四方良し」でありたいと思います。

川原:では、一番嬉しかったことは?

奥森:現在、弊社は200を超える物づくりの拠点とお付き合いしていて、そのすべてに伺っています。その中に新潟・佐渡にあるベビー用肌着を縫って頂いている工場があるのですが、そこでは商品を出荷するときに「うんと可愛がってもらってね」と声を掛けてくださるそうなんです。この話を聞いたときは、本当に涙が出るほど嬉しかったですね。ときどき「(コストの安い)中国産とどこが違うの?」と聞かれることがありますが、作り手が使ってくれる人のことを想って縫っている、それが大きな違いだとお答えします。

生地から開発しているプリスティンだからできるサニタリーグッズ。オーガニックコットンで作られた布ナプキン、パッド、サニタリーショーツなどが揃います。
(photo:PRISTINE)

被災地のグランマと同じ目線でこれからも……

 

川原:最後に奥森さんのもうひとつのお仕事である、ソーシャル事業の“東北グランマの仕事づくり”について聞かせてください。

奥森: “東北グランマの仕事づくり”は2011年の東日本大震災を機に始まりました。被災地では、命は助かったものの仕事がなく、家の中や仮設住宅に閉じこもりがちという方がたくさんいらっしゃいました。そんな方々が集い、言葉を交わす場と雇用を創出すること、そこで生まれた製品を通じて、全国の人々と交流を生むことを目的にスタートしたものです。現在は、定番商品のクリスマスオーナメント、幸せお守り、コットンベイブの販売の他に、OEM製品の製造を承っています。

川原:東北グランマの手作りの帽子とスヌードを、ソチ五輪で浅田真央さんが身に着けてくれたんですよね。

奥森:はい、アイスダンスのキャシー・リード&クリス・リードペアも身に着けてくれたんですよ。とても嬉しかったですね。“東北グランマの仕事づくり”は、被災地のグランマと同じ目線で、これからもずっと続けていきます。

川原:奥森さんの夢、そしてアバンティの夢は?

奥森:アバンティは「100年企業を目指す」としています。オーガニックコットン、そしてオーガニックな考えが広まることが目標ではありますが、「これはダメ、あれもダメ」では息苦しく、突き詰めれば人間の存在を否定することになります。持続可能な暮らしをすること、子供達が安全・安心な生活を送れる未来にすること、みんながハッピーになれる方向に歩むこと、それらを第一に考え、これからも頑張っていきたいと思います。

川原:今日は長い時間、ありがとうございました。

“東北グランマの仕事づくり”のスタートとなったのが、クリスマスオーナメント作り。初年度は2万5000個を完売し、約800万円の工賃を約50名のグランマに支払うことができたそうです。

 

取材を終えて……

展示会などでお会いすると、自社の商品説明と同じくらいに工場の方の話を熱心にしてくださる奥森さんが大好きです。東日本大震災のときも、いち早く被災地の協力工場を見舞われ、そのお話を通じて、私はテレビのニュースでは伝わらない被災地の現状を知りました。今、化粧品や食品を含め“オーガニック”という言葉をよく耳にします。「おしゃれだから」「流行だから」だけではなく、これからずっと持続する真の“オーガニック”とはどういうことなのか、私たちはどんな振る舞いをすればいいのか、これからもたくさん教えていただきたいと思います。

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