Lingerie TALK vol.29『中越レース工業』

中越レース工業(株) デザイン企画課 担当課長

横大路 由美さん(前編)

 

トレンド、美しさ、物性、

その3つのバランスをどうとっていくか。

18年過ぎた今も、日々勉強です。

ランジェリー界で活躍する方々のルーツ、ポリシー、そして夢を語って頂く、「Lingerie Talk @ Lingerie Press」。タケダレースの橘さんに続き、今回もレースのデザイナーとして約18年のキャリアを持つ、中越レースの横大路由美さんに登場していただきます。中越レースはエンブロイダリーレースのメーカーで、国内下着メーカーを中心に幅広く製品を提供されている会社。横大路さんのお仕事の内容やレースに込められた想いをお聞きすると共に、エンブロイダリーレースの魅力や市場の流れについても教えていただきました。

情報収集し、時代の流れを捉えたうえでの提案であることが大切
 

川原好惠(以下、川原):今日はお忙しい中、取材のお時間を頂戴し、どうもありがとうございます。まずは、貴社のお仕事内容について教えていただけますか。

横大路課長(以下、横大路):こちらこそ、ありがとうございます。弊社は、1943年創業の富山県に本社と工場を持つ会社で、エンブロイダリーレースの企画デザイン・生産・販売を一貫して行っています。レースデザイナーも本社に2人、大阪営業所に2人、そして東京営業所に私を含め4人おりまして、本社と大阪営業所は主に関西方面、東京営業所は主に東京のクライアントさんの対応にあたっています。クライアントさんの要望に応える場合、新製品として提案する場合とありますが、デザイナーは年間約200柄程度図案を描いています。

川原:タケダレースさんにもお話を聞いたのですが、やはり年間200柄くらい描かれるとおっしゃっていました。すごい数ですね。どのようなことを念頭に、新しい柄を描かれるのですか?

横大路:まず、さまざまな情報収集を行います。ファッションのトレンド情報はもちろんのこと、海外の素材展情報、国内ブランド、インポートブランド、海外SPA(製造小売業)など店頭の商品も見て、市場の流れを把握するようにしています。クライアントさんからの要望に応えるかたちで柄を提案する場合も、ただ受け身では満足してもらえません。幅広く情報収集しているか、時代の流れを捉えたうえでの提案か否か、クライアントさんからは厳しい目で見られていると思います。グローバルの時代になり、国内外に競合他社はたくさんあるわけで、採用にあたっては常にコンペ形式。興味を持って見てもらえるよう、しっかりと提案力を持ち、工夫を怠らないように心掛けています。

横大路さんは、まず手描きで柄を描き、全体の雰囲気を掴むそうです。1ピッチの柄を描き、それをコピーしたものをつなぎ、完成した全体像をイメージすることも。

パソコンで細部まで描いていきます。図案の段階で、クライアントと綿密な打ち合わせを行うそうです。縫い、補修、加工、カットが可能か確認するのも大切な作業。

 繊細な刺繍の美しさを全面に出しながらも、日本らしい確かな品質を 

 

川原:下着にはさまざまなレースが使われますが、エンブロイダリーレースの魅力は何でしょうか?

横大路:エンブロイダリーレースとは刺繍レースのことで、1833頃に発明されたエンブロイダリーレース機によって刺繍加工を施したレースを指します。その種類は、細かく分ければ色々とありますが、大きくは、チュールネットを基布に刺繍を施した「チュールレース」、綿の基布に刺繍を施した「綿レース」、湯温で溶ける基布に刺繍を施し、基布を溶かして刺繍糸のみを残した「ケミカルレース(ギュピュールレース)」に分けられます。ゲージ(針と針間隔)の制約はありますが、デザインも自由に描けますし、刺繍する生地、糸の組み合わせによって無限の表情を作り出せます。他の種類のレースに比べて、少ないロットでオリジナルの柄を作ることができますし、使用範囲が広いのも大きな特長だと思います。

川原:横大路さんは、レースデザイナーとして18年のキャリアがあるわけですが、その中で、市場が求めるレースにどのような変化がありましたか?

横大路:私が仕事を始めた18年前は、ステッチも多く盛り感(立体感)のある多色使いのエンブロイダリーレースがとても好まれていました。それは、日本独自の流行のようなもので、ヨーロッパの流れとは異なっていたと思います。その流れがずっと続いていましたが、5年ほど前から「薄くて繊細なものを」との要望がよく聞かれるようになり、柄も比較的あっさりとしたヨーロッパテイストのものが増えてきました。この頃は、中国を中心としたアジアのレースメーカーがどんどん日本に参入してきた時期でもあります。その繊細な柄を求める傾向はここ2〜3年さらに強くなり、柄と柄の空きを生かした、軽いけれど動きがあるデザインが好まれるようになりました。とはいえ、完全にヨーロッパテイストになったというわけではなく、繊細な刺繍の美しさを全面に出しながらも、日本らしい確かな品質を兼ね備えたものが求められます。

川原:なんだか欲張りですね(笑)。

横大路:確かに大手メーカーほど物性検査が厳しく、その条件をクリアする生地を探し、繊細さ・美しさと物性の兼ね合いを探ります。トレンド、美しさ・繊細さ、物性、その3つのバランスをどうとっていくか。18年を過ぎた今も、日々勉強です。

チュールに刺繍を施した「チュールレース」。基布となるチュールの種類によっても表情が変わります。

「ケミカルレース」。基布に80〜100℃で溶けるビニロン生地を使用し、刺繍した後に生地を溶解して刺繍糸だけを残します。

エンブロイダリーレースを用いた製品サンプル。両製品とも、裾には、生地の先端部にケミカルレースの柄がはめ込まれた「インケミレース」が使われていいます。

 

*次回(11/30公開予定)は、横大路さんがなぜレースデザイナーを目指されたのか、今に至るまでの経緯、そしてエンブロイダリーレースの生産プロセスについてご紹介します。

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