Lingerie TALK vol.31『栄レースグループ宮城レース』

栄レースグループ宮城レース(株) デザイナー

大谷 史子さん(前編)

 

リバーレースは機械で作るものだけれど

そのプロセスは手仕事と同じ。

だからこそ、独自の美しさと温かみがある。

ランジェリー界で活躍する方々のルーツ、ポリシー、そして夢を語って頂く、「Lingerie Talk @ Lingerie Press」。ラッセルレースのタケダレース、エンブロイダリーレースの中越レースと続き、今回はリバーレースで知られる栄レースグループのデザイナー大谷史子さんに登場していただきます。ランジェリーに携わる者、ランジェリーを愛する者にとってリバーレースの魅力は特別なものですが、その世界トップシェアを誇るのが栄レースグループ。今やランジェリーだけでなく、オートクチュールのメゾンとも取引する同社の物づくりと、大谷さんのリバーレースへの想いをお聞きしました。

世界で稼働しているリバーレース機は約200台
うち87台は栄レースグループが所有
 
 

川原好惠(以下、川原):今日はお忙しい中、取材のお時間を頂戴し、どうもありがとうございます。実は11年前に青島の工場にはお邪魔したことがあり、その規模の大きさに驚きました。ここ宝塚の本社には、生産設備はないのですね?

大谷史子デザイナー(以下、大谷):現在、生産設備は中国の青島とタイに集約しています。ここ宝塚では、本社業務を行うほか、私を含め10名のデザイナーがおります。デザイナーは青島にも3名、タイにも10名おり、世界中のクライアントに対応しています。

川原:貴社はリバーレースでトップシェアと聞いていますが、どの程度の規模なのでしょうか?

大谷:青島にリバーレース機が35台、タイの2つの工場に52台あり、そのすべてが稼働しています。リバーレース機は新たに生産されていないため、現存する機械を修繕しながら使っていくしか生産の道はありません。世界には約200台稼働しているリバーレース機があると言われ、そのうちの87台を栄レースグループが所有しています。

川原:そのリバーレース機の所有数が、まさにトップシェアの証ですね。いつも疑問に思っていたのですが、なぜリバーレース機は現在製造されていないのですか?

大谷:確かにリバーレースの美しさは独自のものですが、機械化・高速化が進むラッセルレースやエンブロイダリーレースと違い、生産するためには多くの手間と時間がかかります。それが、もう時代に合っていないということだと思います。

川原:以前、青島の工場で澤村徹弥社長が「リバーレース機は、毎日ご機嫌をうかがい、会話をしながら動かす。とっても手のかかるお姫様のようだ」とおっしゃっていたのが、記憶に残っています。

大谷:まさにその通りですね。もちろん工場の温度・湿度は各工場が一定に保たれていますが、それでも薄い紙1枚くらいの部品のほんのわずかなズレがレースの完成度に影響します。そのため、毎日同じ出来映えになるように、リバーレース機を調節する技術者の力が必要になります。リバーレースは機械で作るものですが、そのプロセスは手仕事であり、完成したレースすべてに温かみがあり味があります。それが、他のレースとリバーレースの違いであり、リバーレースの最大の魅力だと私は思います。

リバーレース機。産業革命のさなかである1813年に、イギリス人ジョン・リバー氏が、リバーレース機を考案し、リバーレースの原型を作ったことにその歴史は始まります。

 世界で唯一パーツを自社生産し、クオリティを向上

 

川原:貴社はリバーレース機を87台所有するだけでなく、パーツを自社生産されていますよね? それには、どんな意味があるのですか?

大谷:弊社は、リバーレース発祥の地であるイギリス ノッティンガムに唯一残っていた、リバーレース機のパーツ製造会社からパーツ製造機器を買い受け、青島の工場に輸送して設置し、技術者を招聘してパーツ生産の技術を受け継ぎました。先ほどお話したように、現在リバーレース機は生産されていませんが、消耗品であるボビン・キャリッジ・バーといったパーツを新しく生産することで、機械の精度が高まり、弊社の製品クオリティを格段に向上させました。世界のレース業界でも、デザイン企画から撚糸、レースの本機織、染晒(そめさら)し加工まで一貫生産ラインによって運営しているのは栄レースグループだけですし、リバーレース機パーツの自社生産を行っているのも、世界唯一です。

中国 青島市にあるパーツ製造工場の様子。ここでは、リバーレース機の消耗品であるボビン、キャリッジ、バーなどが製造されています。

 ドラフトマンをはじめ、リバーレースは色んな人の力が集結されている

 

川原:今日は大谷さんが描かれた図案がレースになるまでのプロセスを、現物で見せていただけると聞いて楽しみにしてきました!

大谷:こちらになります。これは、社長から「今までにない柄を作れ」と言われて、デザイナー3名とドラフトマン1名の4名チームで作り上げたものです。半年をかけて作り上げたものですが、これが評価されたのは本当に嬉しかったですね。この柄は国内の高級ブランドで採用されましたし、この時に開発したものから、たくさんのデザインが派生しました。

大谷さんが描いた図案

それぞれの糸(この柄では23種)がどのように動いていくかを示した図案

使用する糸の種類別に色分けした図案

実際に生産された実物のリバーレース

 

川原:このレースを使ったスリップ、とても存在感があるので覚えています!リバーレースは花モチーフなどオーセンティックな柄が多いので「こんなリバーレースがあるんだ!」と驚いたことを覚えています。さきほど、“ドラフトマン”とおっしゃいましたが、それはどんな仕事をする人なのですか?

大谷:ドラフトとはレースの設計図で、図案を機械が操る1本1本の糸の動きに分解したものてす。いかに美しいレースに作り上げるかは、このドラフティングにかかっていると言っても過言ではなく、レース作りのノウハウが詰まった作業です。このドラフトを作成するドラフトマンは高い技術力と想像力を要し、完成度を左右するため、新しいものを生み出す際にチームに加わってもらうことは至極当たり前のこと。このようにリバーレースは色んな人の力を集結してできるということですね。

*次号(12/31公開予定)では、大谷さんがなぜレースデザイナーになられたのか、「世界の栄レース」となるまでの経緯、リバーレースが作られる工程などについてご紹介します。

 

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