Lingerie TALK vol.35『Chut! INTIMATES』

『Chut! INTIMATES』チーフデザイナー

斎藤ゆかりさん(前編)

 

私達が作っているのは

「作品」ではなく「商品」、「高級品」ではなく「高価格品」

先輩のその教えが、今も私の基本です

 

ランジェリー界で活躍する方々のルーツ、ポリシー、そして夢を語っていただく、「Lingerie Talk @ Lingerie Press」。今回は5年目を迎えた『Chut! INTIMATES』チーフデザイナーの斎藤ゆかりさん。ブランド設立以来、毎年2ケタ増の成長を遂げ、現在全国に14店舗をかまえるまでに成長。新ブランドが定着しにくい下着業界において、確かな成功をおさめている同ブランドをデビュー時から率いる斎藤さんは、どのようにキャリアを積んで今に至るのか、じっくりお聞きしました。

下着デザイナーの第一歩は“丁稚奉公”から
  

川原好惠(以下、川原):本日は、お忙しいなかお時間をいただき、ありがとうございます。斎藤さんとは、仕事以外でもよくお話をする仲ですが、本日はあらためてそのキャリアをお聞きしたいと思います。まずは、今のお仕事の内容を教えてください。

斎藤ゆかりチーフデザイナー(以下、斎藤): 『Chut! INTIMATES』のチーフデザイナーとして、全商品のディレクション及びデザイン・商品開発を行うほか、ビジュアルのディレクション、店頭VMD、広告宣伝まで見ています。

川原:ブランドのデビューは、2014年3月1日ですね。1号店となるルミネ新宿店のオープン日にはお邪魔しましたが、丸4年が経つなんて早いですね。では、これまでのキャリアを教えてください。

斎藤;文化服装学院マーチャンダイジング科を卒業してから約2カ月後に、富山にある下着用生地と製品を作るメーカーが東京オフィスをかまえるということで入社しました。それが、下着デザイナーとしての第一歩です。

川原:初めの会社では、どんなお仕事でしたか?

斎藤:その会社が本格的にOEM(相手先ブランドによる生産)事業を始めるときで、私も含めて3人体制。上司がデザインし、先輩がパターンをひき、私がサンプルを縫うという流れでした。1年目はショーツ担当で、先輩がひいたパターンを切って裁断し、サンプルを縫うというのが主な仕事。2年目になると、ショーツのパターンをひかせてもらえるようになり、ブラジャーのサンプルも縫えるようになりました。レース屋さんには、「あの頃は斎藤さん、丁稚奉公だったもんね」とよく言われます。

川原:まさに“下積み”という感じですね。

斎藤:実は、丁稚奉公は次の会社でもまだまだ続くんですよ(笑)

2014年3月にルミネ新宿にオープンした『Chut!INTIMATES』1号店。入り口にはコスメ類や下着用洗剤などを並べ、入りやすい雰囲気になっているのも話題となりました。

ブランドデビュー時のポスター。「Chut!」はフランス語で「シーーー!(内緒ね)」を意味します。「秘密のない人生なんて。」のコピーは、今も様々なかたちでプロモーションに展開されています。

この商品にはどれだけのお金を払う価値があるか、冷静に見極める

 

川原:そもそもなぜ下着デザイナーになろうと思ったのですか?

斎藤:昔から下着が好きだったというのが、一番の理由でしょうか。

川原:“昔から”と言うと?

斎藤:下着を好きになったのは高校生の頃だと思いますが、小さな頃から大人の女性への憧れがとても強かったんです。中学生の時に観たフランス映画に出てくる女優やベティ・ペイジ、日本人ならかたせ梨乃や大地喜和子とか。グラマラスでセクシーな大人の女性、彼女達が身につけている黒の下着やストッキングに憧れました。でも、一番衝撃を受けたのは『エージェント・プロヴォケター』だと思います。

川原::『エージェント・プロヴォケター』のデビューは1994年、その前と後では市場が変わったと言っても過言ではないですよね。

斎藤:もともとヴィヴィアン・ウエストウッドが好きで、その息子が下着屋を始めたと聞いて、見たくて見たくて。18歳の時、パンクが好きな友人とロンドンに行ったんですよ。

川原:18歳の斎藤ゆかりさんは、その時どう思ったんですか?

斎藤:「自由なんだ」と……。クオーターカップブラやフワフワの飾りがついたミュールなどが並んでいて、それが“ファッショナブルなランジェリー”を実際に見た、初めての記憶ですね。それから「何でもいいから下着に関わりたい」と思いました。学校の卒業制作もコルセット的な物を作りましたし、インポートの下着が好きだったので、『リュー・ドゥ・リュー』に行ってバイト代を使い果たしたり。18歳で『ラペルラ』や『シバリス』を買っていましたから。

川原:斎藤さんの下着コレクションは、よくInstagram(@yukarisaito_)でも拝見していますが、レアな物も多いし、きっとすごい数ですよね。どれくらいあるんですか?

斎藤:数えたことはないですが、たぶん200セットは軽く超えていると思います。

川原:サンプルとしてではなく、自分で着けるんですか? 

斎藤:はい、全部自分のためですから、自腹で自分のサイズを買って、自分で着けます。下着は一日着けないと、着用感や素材・資材がどんな具合かわかりませんし、自分でお金を払わないとその価値もわかりません。「この商品は、それだけのお金を払う価値があるのか、あるいは値段も見ずに思わず衝動買いしてしまうほど魅力ある商品か」その感覚を忘れないことが、自分が作っているものに対する誠実さにつながると思っています。

川原:厳しいですね。

斎藤:先ほどお話した会社に丸2年務めたあと、大手下着メーカーのプレステージブランドに就職したのですが、そこで先輩デザイナーに「自分達が作っているのは、“作品”じゃなくて“商品”、“高級品”じゃなく“高価格商品”だ」と叩き込まれました。その先輩デザイナーが作る商品は、市場に迎合しないすごくアーティスティックで高価なものだったから、余計にその言葉が心に響いて。でも、それが今でも物作りに対する私の基本になっています。

斎藤さんのInstagram(@yukarisaito_)にアップされた私物のコレクション。伝説のブランドのものからプチプラアイテムまで幅広いラインナップには驚き。その投資額が斎藤さんの糧となっているのですね。

次号(3/15公開予定)では、斎藤さんの“丁稚奉公”と言われたさらなる下積み時代のお話、『Chut!INTIMATES』誕生のお話を伺います。

 

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