Lingerie TALK vol.39 『ビジュリィ』

『ビジュリィ』ディレクター兼チーフデザイナー

田村静江さん(前編)

 

過酷な環境の中、

あきらめないこと、粘り強くやること、

タフになることを学びました

ランジェリー界で活躍する方々のルーツ、ポリシー、そして夢を語っていただく、「Lingerie Talk @ Lingerie Press」。今回は、3月5日にアダストリア初のインナーブランドとしてデビューした『ビジュリィ』のディレクター兼チーフデザイナーの田村静江さんに登場していただきます。大手メーカーの有名ブランドを経て新しい挑戦に至るまでの経緯、ファッションアパレルが手掛ける下着ブランドならではのディレクションについて、じっくりお聞きしました。

ファッションの店でも下着の需要があることを実感
  

川原好惠(以下、川原):『ビジュリィ』はアダストリア初のインナーウェアブランドとして注目を集めていますね。田村さんが手掛けていることもあって、取材先でも話題になることが多いですよ。まずは、現在のお仕事内容を教えていただけますか。

田村静江ディレクター兼チーフデザイナー(以下、静江):ディレクターとチーフデザイナーを兼務していますので、マーケティング、ポジショニング、価格設定、トレンド分析などブランンディングに関わること。またデザインだけでなく、素材開発、仕様、フィッティング、コスト管理など物作り全般。アダストリアはアウターの会社なので、下着を作るのは初めて。その生産背景を整えることも仕事です。他に、プロモーション、広告、web、ショッパーに至るまで、人の目に触れるものすべてに携わります。

川原:現在、『ビジュリィ』は何人のチームで運営されているのですか?

静江:昨年6月に入社した当時は、私一人でスタートした事業だったのですが、現在は8名のチームになりました。

川原:『ビジュリィ』を立ち上げるに至った経緯を教えていただけますか。

静江:アダストリアは2017年秋から新規事業開発に注力していて、ジュエリーやコスメブランド、カフェなどをスタートさせてきました。インナーウェアブランドもその新規事業の一貫で、前職を離れるちょうどいいタイミングで声を掛けていただきました。『ビジュリィ』は私がこれまで経験してきた下着メーカーが作る下着とは違い、ファッションと融合し、ファッションがもたらす“ワクワク”する喜びをお届けするブランドです。販路もアダストリア公式WEBストア『.st』(http://www.dot-st.com/)とZOZOTOWN、アダストリアの既存ブランドの実店舗でのコーナー展開がメインです。

川原:デザインもこれまでとは大きく変わりそうですね。

静江:たしかに求められることが異なります。WEBストアで販売を始める前に社内展示会で発表したのですが、既存ブランドからの反応が良く、実店舗でのコーナー展開が思いのほか多く決まりました。それを見て、ファッションの店でも下着の需要があることを実感しました。

『ビジュリィ』のイメージビジュアル。『ビジュリィ(bijorie)』は、フランス語の「bijou/ビジュー=宝石・宝飾品」と「lingerie/ランジェリー=下着」を合わせた造語。ジュエリーのように素肌を飾るランジェリー、という意味が込められています。

20代のときに、ベテランの大人達に教わったことが今の私の糧

 

川原:これまでの経歴を教えていただけますか?

静江:私は文化服装学院アパレルデザイン科を卒業したあと、何か自分でやりたいと思って就職しなかったんです。服を作ったりして色々と模索している時に、あるコレクションブランドで働いている友人から「手伝って」と言われ、アルバイトに。生地を裁断して縫う、縫製人員のひとりでした。コレクション前は24時間勤務と言っても過言ではないほどの忙しさ。1年アルバイトとして働き、社員になりました。

川原:デザイナーとして就職したのですか?

静江:いえいえ、社員は6〜7人、バイト10名程度で回している小さな会社でしたから、何でもやりました。営業はもちろん、配達、生産管理のアシスタント、コストを計算したり付属品を数えたり。朝仕上がったものを、車を飛ばして加工屋さんに配達し、夕方受け取って夜のモデルフィッティングに間に合わせるなんてことも(笑)。そんな調子だから、デザインのことを考えるのは夜も更けてから。1日18時間くらい会社にいて、自宅にはお風呂に入りに帰っていただけのような時期もありました。

川原:典型的なブラック企業ですね(笑)

静江:あの頃は、ブラック企業なんて言葉もなかったし、ファッション業界で働くとはそういうことだと思っていました。あまりに忙しかったので、悩む暇も病気になる暇もなかったという感じです。

川原:そんなブラックな環境の中で得たことは?

静江:それは山ほど!! 間違いなく、あの時代があって、今の私があると言えます。すべて20代の若い時期だからできたことですが、広く浅く色んな仕事に携わったことで、それぞれのプロフェッショナルにたくさんのことを教わりました。営業をやっていたから百貨店のカリスマバイヤーとも話ができたし、生産管理をやっていたから縫製工場や加工所の熟練職人さん達の仕事を間近で見られました。今思えば、そんな大人達が何も知らない20代の私をよく相手にしてくれたと思いますよ(笑)。小さい会社で滅茶苦茶な環境でしたが、あきらめないこと、粘り強くやること、タフになることを学んだし、根性がつきましたよね。

3月5日に行なわれた、『ビジュリィ』ローンチパーティの様子。モデルのローレン・サイさんと田村静江さんのトークショーも行なわれ、多くの方がお祝いに駆けつけました。

ファッションより下着のほうが、俄然楽しい!

 

川原:その会社には、何年勤めたのですか?

静江:約8年です。30歳くらいになって、まわりの友人達の話を聞いていると、アフターファイブや休日を楽しんだりしているわけです。その時の私には、なかった世界知らなかった世界で、体力の限界もあり、そろそろ次のステップかなと。

川原:それで転職されたのですね?なぜ、下着に携わることに?

静江:そのコレクションブランドが、ある通販会社とのライセンスで下着を作っていて、私が担当していたんです。その時から、下着という小さな面積の中で表現されていることの深さに興味を持っていました。ちょうど、ある大手アパレルと下着メーカーが合弁で会社を作ってブランドを展開していた頃で、そこに就職しました。それまで、自分はファッションが大好きだと思っていましたが、下着のほうが楽しかったし、俄然面白かったですね。

川原:そこから、本格的なランジェリーデザイナー人生がスタートするのですね!

*次号(5/31公開予定)では、下着メーカーとは違う『ビジュリィ』のディレクションの仕方を中心にご紹介します。

関連記事

  1. Lingerie TALK vol.31『栄レースグループ宮城レース』

  2. Lingerie Talk @ Lingerie Press vol.4-1

  3. Lingerie TALK vol.34『Aubade』

  4. Lingerie Talk @ Lingerie Press vol.3-2

  5. Lingerie TALK vol.12 『ワコール』

  6. Lingerie TALK vol.25 『シェリール』

  7. Lingerie TALK vol. 21 『ピーチ・ジョン』

  8. Lingerie TALK vol.42 ワコール 品質保証部 商品試験センター

PAGE TOP