Lingerie TALK vol.41 ワコール 品質保証部 商品試験センター

ワコール 品質保証部 商品試験センター/繊維製品品質管理士

北尾朱美さん(前編)

のべ150項目の検査を行い

安全で安心な商品をお客様に届けるのが

このセンターの役割

ランジェリー界で活躍する方々のルーツ、ポリシー、そして夢を語っていただく、「Lingerie Talk @ Lingerie Press」。今回は、ワコールの品質管理を担う商品試験センターの北尾朱美さんに登場していただきます。ワコール独自の厳しい基準をもうけているという品質管理の現場は、厚いヴエールに包まれているのかと思いきや、とてもオープンで施設内の隅々まで案内していただきました。品質管理という下着にとってなくてはならないお仕事の現場をお伝えします。

法律やJIS規格で定められた検査に加え、ワコール独自の検査を実施

インタビューは京都のワコール本社ビルから徒歩3分ほどの場所にある、商品試験センターで行ない、施設の設備を説明していただきながら、お話を伺いました。

川原好恵(以下、川原):これまで色んな会社にお邪魔しましたが、品質管理の現場を拝見するのは始めてです。

北尾朱美さん(以下、北尾):この商品試験センターでは、ワコールの商品にまつわる様々な品質検査を行なっています。衣類の品質管理に関する試験方法は法律やJIS規格などで決まっていますが、その基準をクリアするのはもちろんのこと、直接肌に身に着ける下着の場合はそれでは不十分なため、ワコール独自の基準をもうけています。それらすべての基準に合格し、安全で安心な商品をお客様にお届けするのが、このセンターの役割。肌に直接触れる物である以上、体への影響が考えられるため、特に安全性を守るのは必須です。ワコールの商品は7割が日本製の生地を使用していますが、3割は海外の生地。それらも、日本のワコールの品質基準をクリアしているか、厳しく検査されます。

川原:具体的にいくつくらいの項目の検査を行なうのですか?

北尾:ブラジャーでのべ150項目の検査を行ないます。ブラジャーは型にもよりますが、約40パーツを縫い合わせてできています。素材も、生地・金属・樹脂など多岐に渡るため、検査の方法も複雑で手間がかかります。

商品試験センター入り口に掲げられた「顧客要求品質」。これに応えるべく、厳しい検査が行なわれています。

ブラジャーに使用されるパーツ。約20もの素材が使用されているため、検査の方法は複雑です。

材料は約1年前、製品は半年前に持ち込まれて検査を実施

 

北尾:ここが商品試験センターで、19名が働いています。村瀬安則商品試験センター長以外、全員女性です。行なわれた試験は基準値に対して合格か不合格かを判断し、それらすべてのデータが報告書として一元管理しています。また、試験を依頼した人、試験を実行した人、それに関わる人達だけが見られるようなシステムになっています。

川原:扉の向こうには、色んな部屋があるようですね。

北尾:後ほど、ひとつひとつご案内しますね。ここでは、大きく分けて、商品に使用する材料の検査と、製品の検査があります。材料は、生地だけでもレース・織地・編地など様々な種類があり、それらがワコールの商品として使えるか否かを検査し、合格した物だけが採用されます。製品の検査は、洗濯検査が主です。当たり前ですが、下着はほぼ使用する度に頻繁に洗濯するものですから、それに耐えられるかは大切なことです。洗濯前と、ワコールで定められた回数を洗濯した後を計測し、縮み・伸び・ほつれ・毛玉・やぶれ・変色などがないかどうかを検査します。材料は発売される約1年前、製品は約半年前にここに持ち込まれます。

18名のスタッフは全員女性。全員がすべての検査を同じレベルで行なえるよう訓練を重ねるそうです。

すべての検査が細かく定められた環境下で実施

 

北尾:ここがその洗濯室です。洗濯方法は、JIS規格で決まっています。ここにある洗濯機にはJIS規格通りに洗濯が行えるようにプログラムが組まれた制御盤が設置されており、ワコールオリジナルです。ここで洗濯されたものは、温度と湿度が一定に保たれている隣の乾燥室で乾かした後、判定します。

定められた条件下で検査できるように設定された洗濯機が並ぶ洗濯室。隣には同じく定められた環境の乾燥室があります。

北尾:ここは、恒温恒湿室。ここでは、生地の破裂や摩耗を検査するのですが、その検査を行なう環境もJIS規格で定められていて、その環境下で検査された物だけが、データとして認められます。

川原:具体的には?

北尾:温度20℃、湿度は65%RHで、ここは1年中、その温度・湿度に保たれています。ここには物理試験用の機械がありますが、生地を持ち込んですぐに検査できるわけではありません。検査する生地は、この部屋に数時間置いてなじませてからではないと検査できないんです。さらに、検査する試験に合わせてカットする必要があります。急ぎでと言われる仕事もありますが、この前工程をやらないとデータとして通用しないんです。

北尾:ここは、伸縮疲労度試験を行なう部屋です。下着の場合、伸縮性が着心地に大きく関係しますよね。ただ、その耐久性を検査する機械もなく、基準値も定められていないんです。そのため、検査する機械も弊社独自で開発しました。ポリウレタンを含む生地から糸が切れて飛び出したり、糸が抜けたりしているのを見たことがあるかもしれませんが、そういったことを防ぐための検査ですね。

恒温恒湿室。検査する生地はこの部屋に数時間以上寝かせた後、検査が行なわれます。

一定の力を加えて破損しないかなどの検査もこの部屋で行なわれます。

堅ろう度の判定は、目の疲労が少ない午前中に

 

川原:ここは、フラスコやボンベが並んで、まるで化学の実験室ですね。

北尾:ここでは、遊離ホルムアルデヒド検査や堅ろう度の検査をします。

川原:堅ろう度ってよく聞きますが、洗濯したときの色落ちのことなのですか?

北尾: 堅ろう度とは、生地の色落ちや変色などがないかをみることを指します。洗濯以外に、汗堅ろう度、耐光堅ろう度、塩素堅ろう度、摩擦堅ろう度など、様々な堅ろう度の検査を行います。

遊離ホルムアルデヒド検査や堅ろう度検査を行なうスペース。

北尾:その結果を判定するのがこの部屋です。定められた照明条件下で、グレースケールを使って検査前と検査後を比べて判定します。非常に繊細で神経を使いますし、目の疲労度も関係してくるため、なるべくこの判定は午前中に行ないます。もし、急ぎで遅い時間に判定しなければならない場合は「仮判定」として、翌朝の午前中、あらためて判定し直します。

堅ろう度検査の判定を行なう部屋。

堅ろう度判定に使用するグレースケール。

北尾:こちらは800倍まで拡大できる光学顕微鏡です。万が一、生地の破損が見つかった場合、例えば虫食いなのか刃物による傷なのか、これで見れば糸の断面から原因が推察されます。さらに、生地の表面形状などを確認するときにも使用します。

川原:ありがとうございます。正直、品質管理は機密事項が多く、こんなに詳しく施設を拝見できるとは思っていませんでした。本当に勉強になりました。

北尾:ワコールの商品の価値をお客様にも知っていただきたいとの思いから、メディアの方やお取引先にこの商品試験センターを公開しています。

800倍にまで拡大できる光学顕微鏡。この施設の中で、一番高価なものだとか。

*次号(6/30公開予定)では、北尾さんが考える品質管理の仕事の重要性、やりがいについてご紹介します。

関連記事

  1. Lingerie Talk @ Lingerie Press vol.1-2

  2. Lingerie TALK vol.37 『Wacoal』

  3. Lingerie TALK vol.32『栄レースグループ宮城レース』

  4. Lingerie TALK vol.39 『ビジュリィ』

  5. Lingerie TALK vol.12 『ワコール』

  6. Lingerie TALK vol.26『シェリール』

  7. Lingerie TALK vol.24『PRISTINE』

  8. Lingerie Talk @ Lingerie Press vol.9

PAGE TOP